「これまでの人生の中で嬉しかったことは何?」
そう聞かれると、少し言葉に詰まってしまうかもしれない。
“手抜き”をせずにやってきたつもりが、どこかで“心を亡くして”忙しさの中だけに
生きてきてしまっていたのかもしれない。
今年50歳という年齢を迎えた。
自らが幼かった頃、50歳と聞けばそれは遥か彼方にいる大人というイメージだった。
そして、いざ自分がその“通過点”にやってきて思うこととはなんだろう。
幼い頃に抱いた印象には程遠く、しかしながら、もう“幼く”もない。
そんな年齢を今、生きている。
日々さざめく心の波の下へ下へと深く潜って行けば、
そこには自分の見たもの、感じてきたものがしっかりと残っていることに気がつく。
僅かなお金を貯めては繰り返し小旅行へと繰り出していた中学生の自分。
出発の朝、薄っすら明け始めた東の空を眺めながら列車に乗り込むと、
何ともいえない弾けるような嬉しさが心の底から込み上げてきた。
随分な遠回りをして今、
ようやく自らの心の中心に再び舞い戻って来たように思う。
“ありのまま”を生きてみよう。
あの出発の朝に見た空を目指して。