画家・増田寿志の仕事と活動を紹介する公式サイトです
《New》グリズリーベア
久し振りに熊という画題に向き合った。
初めて野生の熊を見たのは1999年、春のアラスカだった。降り始めたみぞれが雪に変わる鈍色の空の下、芽吹き始めた灌木の中を行く金色の力強い背中が美しかった。
あれから四半世紀、子供の頃“夢の世界”と思っていた21世紀を進んで来た。これからまた、人々の世界は大きく変わっていくのかもしれない。
“彼ら”の世界、自然のリズム。
人々がした“忘れ物”は、今もそこに残されているような気がしている。
(ミクストメディア、800×1050㍉、2025年制作)
《New》 エゾリス
降り続いた雪が止み、冷え込んだ朝の森。
ふかふかの新雪の中を駆け回っていたエゾリスが、大きな老木の根元で辺りを確認するかのようにして立ち止まった。この秋に貯食しておいたはずの木の実を探しているのだろう。
木立の隙間から射し込み始めた朝日が一瞬、リスの吐く息を黄金色に浮かび上がらせた。
息を吸い、そして、吐く。
小さなエゾリスも、僕たちも同じなのだと、そんな当たり前の事実を思い出す。
何かに追われるかのような日々の暮らしの中で、つい呼吸をしていることさえ忘れているように思う。
“生きる”とは改めて何だろう。
エゾリス2点とも
(ミクストメディア、394×509㍉、2025年制作)
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